古代から近世の林業
古代の日本では、宮殿や寺院を建てるために大量の樹木が切り出され、燃料としての薪や、森林で刈り取った芝草を農作の肥料として使っていました。
そのため、藤原京、平城京、難波京、平安京などが造営された近畿地方には多くのはげ山が出現し、大規模な都市開発が進んだ8世紀頃に巨木や大径木は姿を消したと伝えられています。
そんななか、木材を得るための計画的な植林は、9世紀の平安時代に最古の記録が残っています。
現在の茨城県にある鹿島神宮で、将来の造営に備えるためにスギ4万本などを周辺の土地に植えたそうです。また現在でも植林が盛んな京都北山では14世紀から、奈良の吉野では16世紀から植林が始まっています。
江戸時代に入ると、森林の大部分が藩の管理下となります。各藩では「留木」「留山」と呼ばれた制度で、樹木の伐採を制限したり禁止して、森林を保護し育成に努めていたことが記録されています。
その代表的な例が、現在日本三大美林と呼ばれている静岡県の天竜スギ、三重県の尾鷲ヒノキ、奈良県の吉野スギです。
明治・大正の林業と戦時中の木材需要
明治に入ると国有林、私有林の区分が置かれ、ドイツを参考にして森林の保護・培養と生産力の増進のための森林法が制定されました。それに従い、苗木の植栽・挿し木などによって造林が行われ、伐採する木を選定して森林が大きく変わらないように配慮し、持続的な森林経営を目指しました。
しかし、日本では樹種の選定に困難が伴い、十分な成果は得られませんでした。そのため、大正末期にはアメリカなどから木材の輸入が急増しました。
戦時体制下に入ると、木材は国内での自給が前提となり、戦局の悪化とともに木材の大増産が決定し、国によって民有林の伐採も行われました。
第二次世界大戦が終結しても、復興のために大量の建材や燃料が必要となり、国内の森林は大量伐採が続いたため、その影響で山地災害や水害が各地で発生しました。
国土保全のために造林が推進され新たな森林法が公布され、国による森林計画制度の創設、民有林の伐採規制が行われます。
戦後の復興需要とその後の低迷
戦後の混乱から抜け出して、経済が復興起動に乗り始めると住宅ブームが始まり、木材需要の増大により、木材の輸入自由化が段階的に行われていきました。
70年代に入り高度経済成長のピークが過ぎても、木材需要は拡大を続けましたが、その需要は安価な輸入木材で満たされ。国産の木材の供給量は減少していきます。
国内の林業活動の低迷は、山村の過疎化と高齢化を加速させました。それと同時に50年代から造林した人工林が成長し、育成管理作業が必要な森林が増加しました。
第一次オイルショックにより木材需要も落ち込み、その後の80年代には円高が進み、輸入木材にいっそうの割安感が出て、製品輸入が急増しました。
90年代のバブル崩壊により木材需要はさらに減退し、木材価格は長期に渡って低迷を続けることになります。人工林では間伐などの管理が実施されず、伐採跡地には植林が行われないという事態も見られるようになってしまいました。
そこで2001年に「森林・林業基本法」が制定され、林業の産業・供給に重点を置いた管理経営から、森林の整備・維持を進めていくという現在の林業の形態になりました。
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